1 知覚の問題
2 美的な要素
3 イメージの本質
4 直観像
5 直観像と教育
6 思考に対するイメージの関連
7 精神の成長
8 論理的な偏見
9 ゲシュタルト心理学からの証拠
10 理論から実践へ―プラトン
11 理論から実践へ―ダルクローズ
12 ある反論に対する回答
(ここまでの節省略)
13 より広い観点
(一部省略)
より広く社会学的な観点から見るならば,有機的な関係についての知識(プラトンの用語による)に基づいた生き方は,論理的な思考方式の産んだ体系やイデオロギーよりも,より安全な行動の指針であり,社会的な組織のより確かな基礎です。論理的な思考方式に基づく体系やイデオロギーは,現在の歴史的な物質主義,国家主義,全体主義などに見られるような,自然の発達の逆転を産み出してきました。それらは皆,成長の法則は宇宙に内在
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しているものであり,また自然人において顕在化するものであるという根本的な真理を,なんらかの方法で否定するものです。
論理に基づいた教育の目的は,宇宙に関する論理的な概念の範囲内で,個人が経験を統合する能力を作り出すことである,と記述できるかもしれません。その際の,宇宙に関する論理的な概念には,性格や道徳に関する独断的な概念を含んでいます。
想像力に基づいた教育の目的は,プラトンによって適切に記述されています。それは,すべての生体や植物の構造に入り込んでおり,また,すべての芸術作品の形態上の基礎である,調和やリズムに関する具体的な感覚の覚醒を個人に与え,それによって,子どもが生活や活動において,ある有機的な優雅さや美を帯びるようにする,というものです。そのような教育によって,私たちは子どもに「関係に対する本能」に気づかせます。その本能によって,理性が現われる前であっても,子どもは,美と醜,善と悪,良い行動のパターンと誤れるパターン,気高い人と卑しい人とを見分けることができるようになるのです。
したがって,私が教育制度の中で芸術の地位のために提唱する主張は,非常に遠大なものであることが,すでに明らかでしょう。実のところ,その主張は,次のようなものにほかなりません:広い意味での芸術を,教育の根本的な基礎とするべきである。なぜならば,イメージと概念,感覚と思考が相互に関連し調和するような意識だけでなく,同時に,宇宙の法則に関する本能的な知識と,自然と調和する習慣や行動をも,子どもに身につけさせることのできる教科は,ほかにないからです。
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